事件別解説
CASE
事件別解説
事件別に解説しております。
ご参照ください。
- 暴行事件
- 暴行罪・傷害罪
目次
1 暴行罪・傷害罪の概説
⑴ 暴行罪・傷害罪の違い
暴行罪・傷害罪における暴行とは,人に対する物理力の行使をいいます。具体的には,人を殴る蹴るなどの行為以外にも,大太鼓等を連打する行為(最判昭和29・8・20)や,塩を振りかける行為(福岡高判昭和46・10・11)も暴行に当たると考えられています。
人に暴行した結果,怪我を負わなかった場合には,暴行罪が成立するのに対し,人に暴行した結果,怪我をさせてしまった場合には,傷害罪が成立することになります。
⑵ 法定刑
暴行罪:2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料(刑法第208条)
傷害罪:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第204条)
⑶ 暴行事件・傷害事件の傾向
ア 暴行事件の傾向
平成28年の統計(出展:平成28年度検察統計)によれば,平成28年の暴行事件のうち,警察や検察で被疑者が逮捕されたケースは約44.8%です。暴行罪では,半数近くの被疑者が逮捕されているということになり,逮捕された被疑者については,約58.3%で勾留請求が認容されています。
暴行罪の起訴率は約29.6%で,起訴された事件のうち,略式起訴により処理される割合は約82.5%となっています。不起訴処分における起訴猶予を理由とする場合の比率は,88.8%となっています。イ 傷害事件の動向
平成28年の統計(出展:平成28年度検察統計)によれば,平成28年の傷害事件(傷害致死事件を含みます)のうち,警察や検察で被疑者が逮捕されたケースは約56.7 %です。傷害罪では,半数以上の被疑者が逮捕されているということになり,逮捕された被疑者について約80.2%で勾留請求が認容されています。
傷害事件(傷害致死事件は含みません)の起訴率は約37.0%で,起訴された事件のうち,略式起訴により処理される割合は約61.9%となっています。不起訴処分における起訴猶予を理由とする場合の比率は,80.1%となっています。
2 弁護活動の内容
暴行事件・傷害事件における主な弁護活動は以下のとおりになります。
⑴ 示談交渉
暴行事件・傷害事件など,被害者がいる犯罪においては,被害者との示談交渉が非常に重要です。起訴前に,被害回復がなされ,被害者の処罰感情も緩やかになっていた場合には,起訴猶予などの前科のつかない処分になりやすく,示談締結が起訴後になってしまったとしても,刑務所収容を避ける執行猶予判決の可能性が高くなります。示談金額については,暴行態様や傷害の結果等が影響することになります。不相当に高額な示談金を支払うことにならぬよう,ぜひ一度,弁護士にご相談ください。
⑵ 暴行罪・傷害罪の成否を争う活動
暴行・傷害事件において,暴行行為をしていない場合はもちろん,実際に暴行行為をした場合でも,喧嘩などで相手方から暴力・危害を加えられ又は加えられそうになったので反撃として暴行行為を行ったという事情があれば正当防衛が成立し,暴行罪・傷害罪の責めを負わない余地があります。
また,暴行態様や暴行を加えた部位に照らして,傷害結果が生じるはずがない又は不当に重すぎるものであった場合には,暴行行為と傷害結果との因果関係がないとして,傷害罪の成立を回避する余地があります(因果関係がないとの主張が認められても暴行罪の限度では責任を負うことになります。)。
そこで,暴行罪・傷害罪の成否を争う場合には,被疑者・被告人からその言い分を聞き取った上で,暴行罪・傷害罪の成立を否定する事実を捜査機関に対し主張できるようにアドバイスするとともに,弁護人自ら事件関係者への聞き込みなどを行い,暴行罪・傷害罪が成立しないことを捜査機関・裁判官に対して訴えかけていきます。- 殺人罪・傷害致死罪
目次
1 殺人罪・傷害致死罪の概説
⑴ 殺人罪・傷害致死罪の違い
殺人とは,故意に人の生命を侵害することをいいます。
これに対して,傷害致死罪とは,人を殺す意思はなかったものの,暴行を加えた結果,被害者を死亡させてしまった場合に成立する犯罪です。
⑵ 法定刑
殺人罪:死刑又は無期若しくは5年以上の懲役(刑法第199条)
傷害致死罪:3年以上の有期懲役(刑法第205条)
⑶ 殺人事件・傷害致死事件の動向
ア 殺人事件の動向
平成28年の統計(出展:平成28年度検察統計)によれば,平成28年の殺人事件のうち,警察や検察で被疑者が逮捕されたケースは約44.1%です。殺人事件では,半数近くの被疑者が逮捕されているということになり,逮捕された被疑者について約98.0%で勾留請求が認容されています。
殺人事件の起訴率は約37.0%となっていて,不起訴処分における起訴猶予を理由とする場合の比率は,約4.6%となっています。イ 傷害致死事件の動向
平成28年の統計(出展:平成28年度検察統計)によれば,平成28年の傷害致死事件(単なる傷害事件も含みます)のうち,警察や検察で被疑者が逮捕されたケースは約56.7%です。傷害致死事件では,半数以上の被疑者が逮捕されているということになり,逮捕された被疑者について約80.2%で勾留請求が認容されています。
傷害致死事件(単なる傷害事件は含みません)の起訴率は約58.1%となっていて,不起訴処分における起訴猶予を理由とする場合の比率は,約2.6%となっています。
2 弁護活動の内容
殺人事件・傷害致死事件における主な弁護活動について説明いたします。
⑴ 取調べ対応
殺人及び傷害致死事件などの重大事件では,捜査機関も厳しい取調べを行うのが通常です。一方で,殺人や傷害致死の疑いをかけられている被疑者は,自責の念から自身の言い分を十分に説明することもないまま,捜査機関の厳しい取調べに応じてしまい,捜査機関が考えるストーリーに乗っかってしまうおそれがあります。
しかし,殺人罪は「動機犯」といわれ,その動機の内容や,殺害を決意するに至った経緯には,介護疲れや,単なる快楽目的など様々なものがあり,その動機の内容等が量刑に大きく影響を与えるところ,犯行の動機等は実際に行った被疑者・被告人しかわからないことです。
そこで,被疑者・被告人が体験した真実を基に刑事手続きが進むよう,被疑者・被告人から十分に事情を聞き取った上で,被疑者・被告人の言い分を捜査機関に伝えられるよう,アドバイスをすることが重要な弁護活動の一つとなります。⑵ 殺人罪・傷害致死罪の成否を争う活動
殺人,傷害致死事件において,暴行行為等をしていない場合はもちろん,実際に暴行行為等をした場合でも,喧嘩などで相手方から暴力・危害を加えられ又は加えられそうになったので反撃として暴行行為等を行ったという事情があれば正当防衛を成立し,殺人罪・傷害致死罪の責めを負わない余地があります。
また,暴行態様や暴行を加えた部位に照らして,死亡結果が生じるはずがない場合には,暴行行為等と死亡結果との因果関係がないとの主張をすることで,殺人,傷害致死罪の成立を回避する余地があります(因果関係がないとの主張が認められても,殺人未遂罪,暴行罪等の限度では処罰を受けることになります。)。
そして,殺人罪が成立するためには,殺人の故意(人を殺す意思)があったことが必要であり,殺意がなければ傷害致死罪の成立に止まります。そして,殺意があったか否かは,本人しか分かりません。
したがって,弁護人として,被疑者・被告人から十分に事情を聞き取った上で,殺人罪・傷害致死罪の成否に争える部分がないか検討し,被疑者・被告人に有利な事情に関する証拠集めなどの弁護活動を行います。- 性犯罪事件
- 痴漢(迷惑防止条例違反,強制わいせつ)事件
目次
1 痴漢(迷惑防止条例違反,強制わいせつ)事件の概説
⑴ 痴漢とは
「痴漢」とは,相手方の意に反してなされる性的行為をいうと解されていますが,そもそも法律には,「痴漢罪」というものがあるわけではないので,「痴漢」に該当する行為すべてが犯罪となるわけではありません。
「痴漢」が犯罪として成立する場合には,大きく分けて,各都道府県が定めた条例(いわゆる迷惑防止条例)に違反する場合,又は強制わいせつ罪(刑法第176条)に該当する場合の2つが考えられます。
⑵ 迷惑防止条例違反と強制わいせつの違い
「痴漢」が犯罪として成立する場合には,上記のとおり,各都道府県が定める条例違反となる場合と,強制わいせつ罪に当たる場合の2つが考えられますが,両者の違いはどこにあるのでしょうか。
どちらも相手方の意思に反して,身体を触る行為とされていますが,一般的に両者の違いは,衣服の上から触った場合には迷惑行為防止条例違反,直接触った場合には強制わいせつ罪が成立すると区別されています。
もっとも,身体に直接触った場合といっても,足を触っただけであれば迷惑行為防止条例違反に止まる場合もあれば,衣服の上から触った場合であっても,それが執拗に行われた場合には,強制わいせつ罪となる場合もありますので,注意が必要です。
まとめると,触れられた身体の場所,衣服の内か外か,行為の長短などといった事情を総合考量して,著しく被害者の性的羞恥心を害したか否かが,迷惑行為防止条例違反か強制わいせつ罪かを区別する基準となるといえます。
⑶ 法定刑
迷惑防止条例違反:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(岡山県迷惑防止条例第14条第1項)
強制わいせつ罪:6月以上10年以下の懲役(刑法第176条)
⑷ 痴漢(迷惑防止条例違反,強制わいせつ)事件の動向
平成28年の統計(出展:平成28年度検察統計)によれば,平成28年の強制わいせつ事件(強制わいせつ致死傷事件を含みます)のうち,警察や検察で被疑者が逮捕されたケースは約66.6 %です。強制わいせつ罪では,7割近くの被疑者が逮捕されているということになり,逮捕された被疑者について約90.5%で勾留請求が認容されています。
強制わいせつ事件(強制わいせつ致死傷事件を含みません)の起訴率は約38.9%となっています。不起訴処分における起訴猶予を理由とする場合の比率は,約8.8%となっています。
2 弁護活動の内容
痴漢(迷惑防止条例違反,強制わいせつ)事件における主な弁護活動は以下のとおりになります。
⑴ 示談交渉
痴漢(迷惑防止条例違反,強制わいせつ)事件など,被害者がいる犯罪においては,被害者との示談交渉が非常に重要です。起訴前に,被害回復がなされ,被害者の処罰感情も緩やかになっていた場合には,起訴猶予などの前科のつかない処分になりやすく,示談締結が起訴後になってしまったとしても,刑務所収容を避ける執行猶予判決の可能性が高くなります。
示談金の目安については,犯行態様や被害者の日常生活に与えた影響等が金額に影響することになります。不相当に高額な示談金を支払うことにならぬよう,ぜひ一度,弁護士にご相談ください。
⑵ 痴漢(迷惑防止条例違反,強制わいせつ罪)の成否を争う活動
昨今,痴漢行為をしていないにもかかわらず,痴漢の犯人に間違われ逮捕・勾留されるほか,有罪判決を受けてしまう冤罪事件が,社会問題となっています。
このような冤罪事件を生み出す原因の一つとして,逮捕・勾留された人が厳しい取調べに屈して嘘の自白をしてしまうことが挙げられています。このような厳しい取調べに屈しないよう,弁護人(弁護士)が身柄解放活動及び的確な取調べ対応などのアドバイスを行います。
また,痴漢の疑いを晴らすために,弁護人(弁護士)が独自の捜査を行い,目撃者の証言やその他の客観的証拠を精査し,被害者の証言が信用性に欠けることを説得的に主張することも重要となります。
- 盗撮・のぞき事件
目次
1 盗撮・のぞき事件の概説
⑴ 盗撮・のぞきとは
盗撮,のぞきは,その犯行態様によって,各都道府県が定める条例違反となるか軽犯罪法違反となるかが区別されます。
⑵ 法定刑
迷惑防止条例違反:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(岡山県迷惑防止条例第13条第1項)
軽犯罪法違反:拘留または科料(軽犯罪法第1条第23号)
2 弁護活動の内容
盗撮・のぞき事件における主な弁護活動は以下のとおりになります。
⑴ 示談交渉
盗撮・のぞき事件など,被害者がいる犯罪においては,被害者との示談交渉が非常に重要です。起訴前に,被害回復がなされ,被害者の処罰感情も緩やかになっていた場合には,起訴猶予などの前科のつかない処分になりやすく,示談締結が起訴後になってしまったとしても,刑務所収容を避ける執行猶予判決の可能性が高くなります。
示談金の目安については,犯行態様や被害者の日常生活に与えた影響等が金額に影響することになります。不相当に高額な示談金を支払うことにならぬよう,ぜひ一度,弁護士にご相談ください。
⑵ 身体拘束からの早期釈放活動
盗撮・のぞき事件で逮捕されても,適切な取り調べ対応と弁護活動によって早期に釈放される可能性があります。
身体拘束からの早期釈放を実現するためには,逮捕後の早い段階で,弁護士と面会して取り調べ対応を協議するとともに,検察官・裁判官に対し身体拘束の必要性がないことを説得するために豊富な資料を準備する必要があります。
具体的には,被疑者が反省していることや,身元引受をしてくれる家族がいること,仕事に復帰する必要があること,被害者と示談が成立していることを示す資料を集め,検察官・裁判官を説得することになります。
- 財産犯事件
- 窃盗罪
目次
1 窃盗罪の概説
⑴ 窃盗罪とは
窃盗罪とは,他人の財物を窃取することをいます。
⑵ 法定刑
10年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第235条)
⑶ クレプトマニアについて
昨今,お金に困っているわけではないにもかかわらず,万引きを繰り返してしまう方が増えているとして社会問題となっています。このように万引きを繰り返してしまう背景として,クレプトマニア(窃盗症)という精神疾患が指摘される場合があります。
クレプトマニアとは,個人的に用いるものでも,または金銭的価値のあるものでもないのに,物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返されてしまうという精神障害です。なお,クレプトマニアの方は,過食症や拒食症といった「摂食障害」をはじめとして,「気分障害」,「不安障害」,「人格障害」などが伴っていることもよくあります。
クレプトマニアだったからといって直ちに犯罪ではなくなるわけではありませんが,再犯予防の観点からは,処罰の効果が少なく,治療の必要があるという点が重要といえます。
したがって,クレプトマニアが疑われる場合には,刑罰よりも治療を優先すべきであり,刑事施設に収容されることなく治療に専念できるよう,捜査機関や裁判官に働きかける必要があります。
⑷ 窃盗事件の動向
平成28年の統計(出展:平成28年度検察統計)によれば,平成28年の窃盗事件のうち,警察や検察で被疑者が逮捕されたケースは約31.6%です。窃盗罪では,約3割の被疑者が逮捕されているということになり,逮捕された被疑者については,約85.8%で勾留請求が認容されています。
窃盗罪の起訴率は約41.0%で,起訴された事件のうち,略式起訴により処理される割合は約20.9%となっています。不起訴処分における起訴猶予を理由とする場合の比率は,76.7%となっています。
2 弁護活動の内容
⑴ 示談交渉
窃盗事件など,被害者がいる犯罪においては,被害者との示談交渉が非常に重要です。起訴前に,被害回復がなされ,被害者の処罰感情も緩やかになっていた場合には,起訴猶予などの前科のつかない処分になりやすく,示談締結が起訴後になってしまったとしても,刑務所収容を避ける執行猶予判決の可能性が高くなります。
示談金の目安については,被害金額等が金額に影響することになります。不相当に高額な示談金を支払うことにならぬよう,ぜひ一度,弁護士にご相談ください。
⑵ 再犯防止に向けた活動(クレプトマニアの場合)
上記のとおり,クレプトマニアは精神障害という疾患でもあることから,「刑罰による矯正教育」を施したところで,その効果は少ないとされています。
むしろ,専門的な医療機関と連携し,医学的な見地からクレプトマニアと向き合ったうえで治療に専念する必要があるといえます。
そこで,クレプトマニアが疑われる場合には,専門的な医療機関へ通院して,その治療を行うことができるように環境を調整することが弁護活動の内容となります。
- 詐欺罪
目次
1 詐欺罪の概説
⑴ 詐欺罪とは
詐欺罪とは,人を騙して,お金などの金品又は本来有償である待遇やサービスを得ることをいいます。
⑵ 法定刑
10年以下の懲役(刑法第246条1項)
⑶ 特殊詐欺について
昨今,オレオレ詐欺,振り込め詐欺に代表される特殊詐欺が社会問題化しており,平成29年度における被害額は約390億円と3年連続で減少したものの,依然として高水準にあるといわれています。
近年増加している振り込め詐欺や投資詐欺のような組織的詐欺の量刑(刑罰の重さ)は,重罰化・厳罰化の傾向にあります。
振り込め詐欺や投資詐欺のような組織的詐欺においては,首謀者はもちろん,詐欺被害者に連絡して騙す役割の者(通称「かけ子」)の多くは長期の懲役刑(実刑判決)を受ける傾向にあります。
また,振り込め詐欺や投資詐欺で口座からお金を引き出す役割の者(通称「出し子」)や,現金の受け取り役(通称「受け子」)は,通常組織の末端に位置づけられるものの,詐欺行為の重要な役割を担当しているということで,懲役の実刑判決を受ける可能性が高くなっています。
⑷ 詐欺事件の動向
平成28年の統計(出展:平成28年度検察統計)によれば,平成28年の詐欺事件のうち,警察や検察で被疑者が逮捕されたケースは約58.5%です。詐欺事件では,約6割の被疑者が逮捕されているということになり,逮捕された被疑者について約96.0%で勾留請求が認容されています。
詐欺事件の起訴率は約56.2%となっていて,不起訴処分における起訴猶予を理由とする場合の比率は,約54.9%となっています。
2 弁護活動の内容
⑴ 示談交渉
詐欺事件など,被害者がいる犯罪においては,被害者との示談交渉が非常に重要です。起訴前に,被害回復がなされ,被害者の処罰感情も緩やかになっていた場合には,起訴猶予などの前科のつかない処分になりやすく,示談締結が起訴後になってしまったとしても,刑務所収容を避ける執行猶予判決の可能性が高くなります。
示談金額については,被害金額等が影響することになります。不相当に高額な示談金を支払うことにならぬよう,ぜひ一度,弁護士にご相談ください。
⑵ 詐欺罪の成否を争う活動
詐欺事件において,騙す行為をしていない場合はもちろん,騙す意図はなかった場合(事実との異なることを話してしまったが,自分自身も誤解していた場合など)には,詐欺罪の成立を否定することになります。
また,特殊詐欺(オレオレ詐欺など)の事例において,受け取るものは書類と聞いていたので適法な仕事だと考えていた(詐欺だと思っていなかった)場合にも,詐欺の故意を欠くことから,詐欺罪の成立を否定することになります。
そこで,弁護人(弁護士)としては,被疑者・被告人から十分に事情を聴きとった上で,詐欺罪の成否に争える部分がないか検討し,被疑者・被告人に有利な事情に関する証拠集めなどの弁護活動を行います。
- 少年事件
1 少年事件の概説
⑴ 少年事件とは
少年事件とは,少年(20歳未満の子供)が犯した事件のことをいい,少年事件では,刑事事件に関する手続きを定めた刑事訴訟法のほか,少年法が適用されることになります。
少年法は,20歳未満で刑罰法令に違反した・違反する可能性がある行為を行った子供を「非行のある少年」として,刑事司法において特別な取り扱いをするための手続きを定めた法律です。
少年事件は,刑事事件の一分野ではあるものの,少年法の適用により,成人の刑事事件とは異なる点が数多く存在します。詳しくは,少年事件の流れをご覧ください。
⑵ 少年法の目的,保護処分原則主義とは
少年法には,「少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」と規定されており(少年法第1条),少年法の目的が「少年の健全な育成」にあると考えられています。
このことから,非行を犯した少年については,原則として,刑罰とは異なる保護処分といった教育的手段によってその非行性(非行に至った問題点)を取り除くことに努め,このような教育的手段によって少年を処遇することができない,又は不適当と考えられる場合にのみ成人と同じように刑罰を科すという保護処分原則主義が導かれるとされています。
このように保護処分原則主義がとられている背景には,少年の可塑性(少年は人格的に発展途上であり,適切な教育により更生することができること)の高さゆえに,非行を犯した少年も,適切な教育を施せば,健全な社会人として成長する可能性が高く,むしろそのようにする方が,単に制裁として刑罰を科すよりも,少年本人のみならず社会にとっても利益が大きいという考え方があるとされています。
⑶ 少年事件の動向
平成29年の統計(出展:平成29年度犯罪白書)によれば,平成28年度における少年による刑法犯の検挙人員(触法少年の補導人員も含みます。)は,戦後最少の4万103人(前年比17.6%減)でした。
また,平成28年度における少年による刑法犯の人口比(10歳以上の少年10万人当たりの,刑法犯の検挙人員のことをいいます。)については,347.1(前年比72.3pt低下)であり,人口比の最も高かった昭和56年(1,432.2)の約4分の1になっています。さらに,平成28年度における少年比(成人も含めた全体の検挙人員における少年の割合のことをいいます)についても,17.1(前年比2.4pt低下)となっております。
2 少年事件における弁護人活動・付添人活動の内容
⑴ 捜査段階における弁護人(弁護士)活動
ア 不送致に向けた活動
少年事件の場合,捜査機関が捜査を遂げた結果,少年が罪を犯したと判断できない場合(犯罪が成立しない場合や人違いであった場合等),捜査機関は基本的に事件を家庭裁判所に送致することはせず,事件の手続きは捜査段階で終了となります。
そこで,少年が犯行内容を否認している場合には,弁護人は,少年にかけられた疑いを晴らすために,少年からの聞き取りをもとに,捜査機関に対し犯罪が成立しない旨の主張をすることになります。また,不利益な情報を捜査機関に与えないよう黙秘権・供述拒否権に関するアドバイスを行うほか,弁護人による独自の捜査も実施します。
イ 身体拘束からの解放に向けた活動
少年事件であっても,成人による刑事事件と同様に,逮捕・勾留されることがあります。少年が逮捕・勾留により身体を拘束され続けた場合,欠席・欠勤による退学・解雇,入学・卒業試験を受けることができないなど,さまざまなデメリットが生じます。
そこで,弁護人としては,不必要な身体拘束からの解放に向けて,身体を拘束されてしまった少年が一日も早く釈放され,日常生活を取り戻せるよう,身体拘束からの解放活動を行います。
ウ 示談締結等に向けた活動
少年事件における示談の締結は,成人事件における場合と異なり,それだけで直ちに事件が終わるといった効果はありません。
しかし,被害者との間で話が済んでいるということは,少年及びその家族が,少年が犯した事件に対して責任を感じているという評価につながり,少年の最終的な処分を判断する上で非常に重要な要素となりえます。
また,示談締結には,民事的な紛争を解決するという要素もあることから,示談が締結されると,今後の被害者からの民事的な請求に対する不安からも解消されることになります。
そこで,弁護人としては,少年の更生及び民事的な紛争の解決等に向けて,積極的に被害者との示談締結に向けて活動します。
⑵ 審判(裁判)段階における付添人(弁護士)活動
ア 適正な処分に向けた活動(環境調整)
【非行内容(犯行内容)を否認している場合】
犯行内容を否認している場合には,もちろん非行事実なしの判断(成人による刑事事件における無罪判決)が目標になります。
そのためには,捜査機関側が集めた証拠の緻密な検討,無罪を証明する証拠の積極的な収集などの弁護活動を行います。
【非行内容(犯行内容)を認めている場合】
家庭裁判所は,審判に向けて調査を行います。そして,調査には,主に調査官が行う要保護性(少年が将来的に再非行に至る可能性)に関する社会調査(通常,少年やそのご家族との面接のほか,少年の学校・職場での生活態度等を調査します。)がありますが,この社会調査が少年の処分を左右する重要な手続きとなります。なぜなら,調査官が作成する社会調査票には,少年が非行に至った少年自身の問題点や,家庭内の問題点等が記載されたうえで,それらの問題点がどれだけ解消されているかをもとに少年に対する処分意見が記載されるところ,裁判官はその意見を参考にするためです。
そこで,少年が非行内容(犯行内容)を認めている場合,付添人である弁護士は,少年やそのご家族が,少年自身の問題点や家庭内の問題点などに気づき,それらの問題点の解消に向けた具体的ビジョンを描けるようにサポートをすることが必要となります。
また,少年の周りに少年の更生を支える環境がない場合や,少年の更生の障害となりうる環境がある場合には,少年の更生に適した環境となるよう活動することもまた付添人(弁護士)の役割とされています。具体的には,家族間の仲が悪い場合には,少年と家族の仲を取り持ったり,学校や職場に復帰できるように各関係者に働きかけたり,不良交友関係の解消に向けた方策作りなどの活動を行います。
イ 身柄拘束の解放に向けた活動
少年事件の場合,逮捕・勾留後は観護措置がとられるケースが多くなります。そのような場合には,身体拘束期間が長期にわたることから,身体拘束に伴うデメリットもより大きなものとなります。
そこで,付添人(弁護士)としては,不必要な身体拘束からの解放に向けて,身体を拘束されてしまった少年が一日も早く解放され,日常生活を取り戻せるよう付添人活動を行います。
ウ 示談締結等に向けた活動
被害者との間で話が済んでいるということは,少年の最終的な処分を判断する上で非常に重要な要素となりえます。また,示談締結には,民事的な紛争を解決するという要素もあることから,示談が締結されると,今後の被害者からの請求に対する不安からも解消されることになります。
そこで,付添人(弁護士)としては,最終的な処分の軽減及び民事的な紛争の解決等に向けて,積極的に被害者との示談締結に向けて活動します。
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