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お知らせ

2022.04.01

無実・無罪を証明してほしい

1 はじめに

残念ながらこの国においては,いわれのない罪について疑いをかけられてしまうことはもちろん,いわれのない罪について刑罰を受けてしまうこともあるのが実情です。

しかし,たった1件でも冤罪があってはなりません。「10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜(むこ)を罰するなかれ」という法格言があります。周防正行監督の作品『それでも僕はやってない』という映画の冒頭にも紹介される言葉です。この言葉の意味は,「10人の真犯人を逃すことがあっても,1人の無実の者を罰してはならない」すなわち,「10人の真犯人を逃すことよりも,1人の無実の者を罰することの方が悪である」ということを意味しているといえます。この言葉は,現代の刑事手続きにおいて最も重視されなければならない言葉とされています。

刑事裁判に弁護人として携わる者である以上,この言葉が本当の意味で市民に理解されるとともに,冤罪事件が2度と起こらないよう職務に取り組んでいます。

以下,無実・無罪を求める弁護活動の一例を説明いたします。


2 捜査段階における弁護活動

⑴ 捜査段階における弁護活動の制約

捜査段階における弁護活動には,ひとつ大きな制約があります。それは,捜査段階において弁護人(弁護士)は,捜査機関が収集した証拠を見ることができないという点です。

したがって,捜査段階における弁護活動は,基本的に罪を犯したとされる被疑者本人の供述のみを柱に行わざるを得ません。

⑵ 取調べ対応に関するアドバイス

捜査機関が被疑者に対して取調べをしている場合,捜査機関は,客観的な証拠をそろえ,あとは被疑者から自白をとるだけと考えている場合が多いといえます。そこで,捜査機関による取調べに対しどのように対応するかが,弁護活動の切り札にもなることがあります。

それでは,捜査機関による取調べに対し,どのように対応すればよいのでしょうか。

その答えは,あくまでケースバイケースとしかいうことができませんが,原則として黙秘権・供述拒否権を行使することが非常に有益となります。黙秘権・供述拒否権とは,捜査機関からの取調べの際,警察官等からの質問に答えない権利のことをいいます。

なぜなら,事件当時の記憶がはっきりしない中で警察官等からの質問に答えてしまうと,捜査機関が持っている客観的な証拠と矛盾しているかもしれませんし,こちらの話を潰すような証拠を作られてしまうこともあるからです。上記のように,捜査機関が集めた証拠を見ることができない段階では,捜査機関に話をすることはリスクが伴います。

一方で,黙秘しているだけでいいというわけではありません。具体的事案によっては,積極的にこちらが持っている情報を伝えた方がいい場合も考えられます。

したがって,具体的な事案においてどのように取調べ対応をすればいいかは,弁護人(弁護士)とよく相談したうえで,判断する必要があります。


3 公判(裁判)段階における弁護活動

⑴ 証拠の開示請求

公判(裁判)段階に至ると,捜査段階では見ることができなかった証拠を弁護人(弁護士)も見ることができるようになります。

しかし,ただ待っているだけでは,捜査機関は弁護人に対しすべての証拠を見せてくれません。弁護人(弁護士)は,どのような証拠を捜査機関が収集しているのか推測したうえで,検察官に対して必要な証拠を開示するように請求しなければなりません。そして,どのような証拠があるかを推測するためには,豊富な経験が必要とされています。

そのような豊富な経験から,必要な証拠の開示を受けることが,公判(裁判)段階における弁護活動のスタートであるとともに,極めて重要な要素となります。

⑵ 証拠の吟味

証拠の開示を受けた後は,たくさんの証拠を丁寧に吟味することが重要となります。

検察官が有罪であると考える根拠となるべき証拠は何か,弁護人(弁護士)が有利と考える証拠は何かなど様々な視点で,何度も証拠を見直すことが求められます。

⑶ 法廷での弁護活動

無罪を獲得するためには,上記で述べた準備活動を前提に,弁護人(弁護士)が無罪であると考える根拠を裁判官・裁判員にも納得してもらわなければなりません。

特に裁判員裁判においては,一般の方々が裁判にかかわることになりますので,一般の人々にも納得してもらえるように,わかりやすく伝えることができるか否かが重要となります。

このような法廷弁護技術は,一朝一夕で身につくものではありません。弁護人(弁護士)には,法廷での実践経験など,日々の研鑽に努めなければなりません。


4 最後に

上記で述べた弁護活動はあくまで一例であり,弁護活動の一部にすぎません。実際に無罪判決を獲得するためには,上記以外にも多大な努力と労力が必要とされています。

葵綜合法律事務所では,絶対にあってはいけない冤罪事件が起こらないように,全力で取り組んで参ります。

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