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2022.05.15

刑事事件

全部執行猶予の場合における執行猶予の取消しとは?

 

本日は,「全部執行猶予の場合における執行猶予の取消し」について説明いたします。

 

目次

     

    1 そもそも,執行猶予とは

     

    執行猶予とは,有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予し,その間に罪を犯さなかったときは,刑の言渡しがなかったのと同様の効果を生じさせる制度です。

     

    例えば,“懲役2年,執行猶予3年”という判決が言い渡されたとすると,“ひとまず一般の社会で生活させて,3年間罪を犯さなければ,2年間刑務所に行く必要はなくなる”ということになります。

     

    なお,猶予される刑の内容としては,初度の執行猶予の場合は3年以下の懲役・禁固または50万円以下の罰金,再度の執行猶予の場合は1年以下の懲役・禁固になります。

     

    また,猶予される期間は,1年以上5年以下になります。

     

     

    2 全部執行猶予の場合における執行猶予の取消しについて

     

    上記の通り,“懲役1年執行猶予3年”という判決の場合,3年間の執行猶予期間に一度も罪を犯さなければ,刑務所に行かなくてもよいことになります。

     

    ただし,執行猶予がついて社会復帰したとしても,新たに罪を犯したりした場合などに執行猶予が取消されてしまう場合があります。

     

    執行猶予が取り消されてしまう場合には,⑴必要的取消しと⑵裁量的取消しの2種類があります。

     

    ⑴ 必要的取消しについて

     

    必要的取消しとは,以下の事由が存在すると,必ず執行猶予が取り消されてしまうケースのことです(刑法第26条)。

     

    ア 執行猶予の期間中に再度犯罪を起こし,その犯罪について禁錮以上の判決を受け,執行猶予がつかなかった場合

     

    イ 執行猶予判決の言渡し前に起こした別の犯罪について禁錮以上の判決を受け,執行猶予がつかなかった場合

     

    ウ 執行猶予の判決を受けた後,同判決の前に別の犯罪について禁錮以上の判決を受けていたことが発覚した場合(当該別の犯罪に関する刑の執行が終わった日等から5年を経過している場合,当該別の犯罪について執行猶予がついた場合は除く)

     

     

    ⑵ 裁量的取消しについて

     

    裁量的取消しとは,以下の事由が存在する場合,裁判官の裁量により執行猶予が取り消される可能性があるケースのことです(刑法第26条の2)。

     

    ア 執行猶予の期間中に再度犯罪を起こし,その犯罪について罰金刑の判決を受けた場合

     

    イ 保護観察付きの執行猶予判決を受けたが,その際の遵守事項を守らず,違反の程度が重大である場合

     

    ウ 執行猶予の判決を受けた後,同判決の前に別の犯罪について禁錮以上の刑を受けたが,執行猶予がついたことが発覚した場合

     

    上記の執行猶予取消事由に該当した場合,まずは検察官が裁判所に執行猶予の取消しを請求し,その後,裁判所が執行猶予の取消しを決定するという流れになります(刑事訴訟法第349条,349条の2)。

     

     

     



     

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