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2021.04.01

刑事事件

刑の一部執行猶予の要件とは?

 

平成28年6月1日に施行された改正刑法及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律(以下「薬物法」といいます。)により,刑の一部執行猶予制度が開始されました。

 

本日は,「刑の一部執行猶予の要件」について説明いたします。

 

目次

     

    1 そもそも,刑の一部執行猶予とは

     

    まず,刑の執行猶予とは,有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予し,その間に罪を犯さなかったときは,刑の言渡しがなかったのと同様の効果を生じさせる制度です。

     

    そして,刑の一部執行猶予とは,言い渡された刑の一部が猶予される制度のことをいいます。

     

    例えば,“懲役2年,その刑の一部である懲役6月の執行を3年間猶予する”という判決が言い渡されたとすると,まず猶予されなかった期間(1年6か月)を実際に服役し,その服役が終わると,懲役6か月については3年間その執行が猶予されることになります。

     

    したがって,猶予期間である3年間を無事に生活することができれば,懲役6か月の部分は執行されないことになるというものです。

     

    このように,刑の一部執行猶予の場合は,一定期間刑務所に収容されることになりますので,実刑判決の一種ともいえます。

     

     

    2 刑の一部執行猶予の要件

     

    上記のとおり,刑の一部執行猶予には,改正刑法上のものと薬物法上のものがあり,それぞれ要件が定められています。

     

    ⑴ 改正刑法上の一部執行猶予の要件

     

    改正刑法上の一部執行猶予(刑法第27条の2第1項)を付することができる場合とは,以下のとおりになります。

     

    ①以下の対象者に当たること

    ⅰ)前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

    ⅱ)前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その刑の全部の執行を猶予された者

    ⅲ)前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

     

    ②今回言い渡される刑が3年以下の懲役または禁錮であること

     

    ③犯情の軽重,被告人の境遇その他の情状を考慮して,再犯を防ぐために必要で,かつ,相当であると認められること

     

     

    ⑵ 薬物法上の一部執行猶予の要件

     

    薬物法上の一部執行猶予(薬物法第3条)を付することができる場合とは,以下のとおりになります。

     

    ①大麻,覚せい剤,麻薬等の規制薬物等の使用や単純所持等の罪を犯した者(刑法上の一部執行猶予の対象者を除く)であること

     

    ②今回言い渡される刑が3年以下の懲役または禁錮であること

     

    ③犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して,刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが,再び犯罪をすることを防ぐために必要であり,かつ,相当であると認められること

     

    以上のとおり,薬物使用等の罪を犯した者については,刑法上の一部執行猶予の対象とならない累犯者であっても,一部執行猶予の対象者となります。

     

    このように,薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関し,その言渡しをすることができる者の範囲が拡大されている趣旨は,薬物使用等の罪を犯した者のうち規制薬物に対する依存のある者については,再び犯罪をすることを防ぐため,刑事施設における処遇に引き続き社会内においてその者の特性に応じた処遇を実施することにより規制薬物等に対する依存を改善することが有用であると考えられている点にあります(薬物法第1条)。

     

     



     

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    葵綜合法律事務所は,岡山県岡山市に事務所を構える法律事務所であり,刑事事件・少年事件を重点的に取り扱う弁護士北村一が所属しています。

     

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