COLUMN
お知らせ
2018.06.12
不起訴にしてほしい(前科をつけたくない)
1 はじめに
前科とは,一般的に,過去に刑事裁判において有罪判決を受けたことをいいます。
そこで,犯行内容を認めている場合に前科を避けるためには,刑事裁判そのものを回避する必要があります。
以下,前科による不利益について簡単に説明するとともに,刑事裁判そのものを回避する方法について説明いたします。
2 前科による不利益
⑴ 検察庁等におけるデータベースでの管理
前科がついた場合には,法務省所管のもと検察庁のデータベース内に犯歴票等として記録され,前科を有する者が死亡するまで管理されます(犯歴事務規定18条)。
前科を有する者が再度犯罪を行った場合,検察官・裁判官はかかる記録を基に処分を決めることになり,前科を有する者に対してはより重たい処分が選択されることになります。なお,前科が戸籍や住民票などに記載されることはありません。
⑵ 資格・職業の制限
前科がついてしまうと,前科の内容に応じて,すでに持っている公的な資格が停止・剥奪されることや,今後の資格取得に制限が生じてしまう場合があります。
⑶ 海外渡航の制限
旅券法により,禁錮以上の刑に処せられた場合(執行猶予も含みます)は,旅券の発給等が制限を受ける可能性があり,また,禁錮以上の前科がある場合は,旅券返納命令の可能性があります。
さらに,禁錮以上の刑に処せられなくても,前科があると,旅行先の国の入国審査で引っかかってしまうことがあります。
3 刑事裁判を回避する方法
⑴ 警察による微罪処分
微罪処分とは,警察が,罪を犯した成人の事件を検察に送致することなく,刑事手続を警察段階で終了させる処分のことをいいます。手続きが警察段階で終了しますので,刑事裁判になることはなく,前科もつきません。
微罪処分となる事件とは,「犯罪事実が極めて軽微であり,かつ,検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたもの」(犯罪捜査規範第198条)とされており,具体的には,窃盗,詐欺,横領などの財産犯事件(①被害金額が2万円以下であること,②被害回復がなされていること,③被害者が処罰を望んでいないこと等)や突発的な軽微な暴行事件等が対象と考えられています。
そこで,微罪処分を獲得するために,被害回復などの被害者対応といった活動を行います。⑵ 起訴猶予・告訴取消を理由とする不起訴
起訴猶予とは,犯罪を証明する十分な証拠はあるものの,被疑者の性格,犯罪の軽重等により刑罰を与える必要がないと考えた場合に不起訴とする処分のことをいいます。告訴取消を理由とする不起訴とは,起訴するために告訴が必要とされる親告罪(器物損壊等)において,告訴という要件を欠くことにより不起訴とする処分のことをいいます。いずれであっても起訴しない処分になりますので,刑事裁判になることはなく,前科が付くこともありません。
起訴猶予又は告訴取消を理由とする不起訴処分どちらにおいても,重要となるのは,被害者との示談締結になります。被害者に対する示談に関しては,捜査機関としては,当事者同士で行わせると,トラブルの素になるため,一般的には,弁護士が弁護人として間に入って行う形になります。そのため,不起訴処分を獲得するためには,弁護士を弁護人として選任し,被害弁償や示談に当たってもらう必要があります。
また,示談締結以外にも被疑者の反省を促すことや,再犯防止に向けた環境を調整するなどして,起訴を回避するための活動を行います。
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