COLUMN
お知らせ
2018.06.13
少年事件
1 少年事件の概説
⑴ 少年事件とは
少年事件とは,少年(20歳未満の子供)が犯した事件のことをいい,少年事件では,刑事事件に関する手続きを定めた刑事訴訟法のほか,少年法が適用されることになります。
少年法は,20歳未満で刑罰法令に違反した・違反する可能性がある行為を行った子供を「非行のある少年」として,刑事司法において特別な取り扱いをするための手続きを定めた法律です。
少年事件は,刑事事件の一分野ではあるものの,少年法の適用により,成人の刑事事件とは異なる点が数多く存在します。詳しくは,少年事件の流れをご覧ください。
⑵ 少年法の目的,保護処分原則主義とは
少年法には,「少年の健全な育成を期し,非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに,少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」と規定されており(少年法第1条),少年法の目的が「少年の健全な育成」にあると考えられています。
このことから,非行を犯した少年については,原則として,刑罰とは異なる保護処分といった教育的手段によってその非行性(非行に至った問題点)を取り除くことに努め,このような教育的手段によって少年を処遇することができない,又は不適当と考えられる場合にのみ成人と同じように刑罰を科すという保護処分原則主義が導かれるとされています。
このように保護処分原則主義がとられている背景には,少年の可塑性(少年は人格的に発展途上であり,適切な教育により更生することができること)の高さゆえに,非行を犯した少年も,適切な教育を施せば,健全な社会人として成長する可能性が高く,むしろそのようにする方が,単に制裁として刑罰を科すよりも,少年本人のみならず社会にとっても利益が大きいという考え方があるとされています。
⑶ 少年事件の動向
平成29年の統計(出展:平成29年度犯罪白書)によれば,平成28年度における少年による刑法犯の検挙人員(触法少年の補導人員も含みます。)は,戦後最少の4万103人(前年比17.6%減)でした。
また,平成28年度における少年による刑法犯の人口比(10歳以上の少年10万人当たりの,刑法犯の検挙人員のことをいいます。)については,347.1(前年比72.3pt低下)であり,人口比の最も高かった昭和56年(1,432.2)の約4分の1になっています。さらに,平成28年度における少年比(成人も含めた全体の検挙人員における少年の割合のことをいいます)についても,17.1(前年比2.4pt低下)となっております。
2 少年事件における弁護人活動・付添人活動の内容
⑴ 捜査段階における弁護人(弁護士)活動
ア 不送致に向けた活動
少年事件の場合,捜査機関が捜査を遂げた結果,少年が罪を犯したと判断できない場合(犯罪が成立しない場合や人違いであった場合等),捜査機関は基本的に事件を家庭裁判所に送致することはせず,事件の手続きは捜査段階で終了となります。
そこで,少年が犯行内容を否認している場合には,弁護人は,少年にかけられた疑いを晴らすために,少年からの聞き取りをもとに,捜査機関に対し犯罪が成立しない旨の主張をすることになります。また,不利益な情報を捜査機関に与えないよう黙秘権・供述拒否権に関するアドバイスを行うほか,弁護人による独自の捜査も実施します。
イ 身体拘束からの解放に向けた活動
少年事件であっても,成人による刑事事件と同様に,逮捕・勾留されることがあります。少年が逮捕・勾留により身体を拘束され続けた場合,欠席・欠勤による退学・解雇,入学・卒業試験を受けることができないなど,さまざまなデメリットが生じます。
そこで,弁護人としては,不必要な身体拘束からの解放に向けて,身体を拘束されてしまった少年が一日も早く釈放され,日常生活を取り戻せるよう,身体拘束からの解放活動を行います。
ウ 示談締結等に向けた活動
少年事件における示談の締結は,成人事件における場合と異なり,それだけで直ちに事件が終わるといった効果はありません。
しかし,被害者との間で話が済んでいるということは,少年及びその家族が,少年が犯した事件に対して責任を感じているという評価につながり,少年の最終的な処分を判断する上で非常に重要な要素となりえます。
また,示談締結には,民事的な紛争を解決するという要素もあることから,示談が締結されると,今後の被害者からの民事的な請求に対する不安からも解消されることになります。
そこで,弁護人としては,少年の更生及び民事的な紛争の解決等に向けて,積極的に被害者との示談締結に向けて活動します。
⑵ 審判(裁判)段階における付添人(弁護士)活動
ア 適正な処分に向けた活動(環境調整)
【非行内容(犯行内容)を否認している場合】
犯行内容を否認している場合には,もちろん非行事実なしの判断(成人による刑事事件における無罪判決)が目標になります。
そのためには,捜査機関側が集めた証拠の緻密な検討,無罪を証明する証拠の積極的な収集などの弁護活動を行います。
【非行内容(犯行内容)を認めている場合】
家庭裁判所は,審判に向けて調査を行います。そして,調査には,主に調査官が行う要保護性(少年が将来的に再非行に至る可能性)に関する社会調査(通常,少年やそのご家族との面接のほか,少年の学校・職場での生活態度等を調査します。)がありますが,この社会調査が少年の処分を左右する重要な手続きとなります。なぜなら,調査官が作成する社会調査票には,少年が非行に至った少年自身の問題点や,家庭内の問題点等が記載されたうえで,それらの問題点がどれだけ解消されているかをもとに少年に対する処分意見が記載されるところ,裁判官はその意見を参考にするためです。
そこで,少年が非行内容(犯行内容)を認めている場合,付添人である弁護士は,少年やそのご家族が,少年自身の問題点や家庭内の問題点などに気づき,それらの問題点の解消に向けた具体的ビジョンを描けるようにサポートをすることが必要となります。
また,少年の周りに少年の更生を支える環境がない場合や,少年の更生の障害となりうる環境がある場合には,少年の更生に適した環境となるよう活動することもまた付添人(弁護士)の役割とされています。具体的には,家族間の仲が悪い場合には,少年と家族の仲を取り持ったり,学校や職場に復帰できるように各関係者に働きかけたり,不良交友関係の解消に向けた方策作りなどの活動を行います。
イ 身柄拘束の解放に向けた活動
少年事件の場合,逮捕・勾留後は観護措置がとられるケースが多くなります。そのような場合には,身体拘束期間が長期にわたることから,身体拘束に伴うデメリットもより大きなものとなります。
そこで,付添人(弁護士)としては,不必要な身体拘束からの解放に向けて,身体を拘束されてしまった少年が一日も早く解放され,日常生活を取り戻せるよう付添人活動を行います。
ウ 示談締結等に向けた活動
被害者との間で話が済んでいるということは,少年の最終的な処分を判断する上で非常に重要な要素となりえます。また,示談締結には,民事的な紛争を解決するという要素もあることから,示談が締結されると,今後の被害者からの請求に対する不安からも解消されることになります。
そこで,付添人(弁護士)としては,最終的な処分の軽減及び民事的な紛争の解決等に向けて,積極的に被害者との示談締結に向けて活動します。
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